HERZ “KNOWLEDGE BAG”

『イル・ポスティーノ』という映画がある。
イタリアに亡命したチリの詩人パブロ・ネルーダと、彼のもとへ届く手紙を配達するイル・ポスティーノ=郵便屋との交流を描いた作品である。
私は郵便屋の持っている鞄が欲しかった。彼はいつも肩から鞄をさげて、自転車に乗ってやってくる。詩人へ宛てられた手紙が詰められたその鞄は実直に仕事に応え、使い込まれた皮革は日に焼けた郵便屋の肌のようにすべやかだ。
そういう確かな機能性とシンプルな美しさを兼ね備えた鞄を私はずいぶん長い間探していたのだが、青山にあるHERZという小さな鞄屋で、ついにそれを見つけることが出来た。
その鞄にはナレッジバッグという名前が付けられている。
鞄のデザイナーの名前にちなんで命名されたその鞄は学生が教科書やノートを詰めて、知識を詰めていけるようにという思いで作られたそうだ。と同時にデザイナーは郵便屋の鞄をもモチーフとしていたという。私が欲しかったものを誰かが作ってくれていた。素敵なことだ。
革製のショルダーバッグで、A4サイズの用紙がちょうど入る大きさ。マチが見た目より広く、容量が大きい。本当に詰め込みたいものは全て入ってしまうような安心感がある。ラティーゴと呼ばれる成牛の革が使われていて、非常に堅牢。そして重い。鞄を背負っていることをいつも意識させる存在感。使い込むほどに色に深みが増し、艶がでてくるそうだ。大切に使えば、本当に一生使えるものだと思う。むしろ今は、私はこの鞄に負けてしまう。分不相応なのだ。この鞄が似合う人間にならないといけないのだろう。知識を得て、風格を纏うことによって。


http://www.leatherbag.co.jp/2_basic/database/c/c137.html